Technical Report

がん:ヒト多能性幹細胞あるいは患者に由来する腫瘍オルガノイドを用いた膵管がんのモデル作製と薬剤スクリーニング

Nature Medicine 21, 11 doi: 10.1038/nm.3973

膵外分泌部の発生や原発性のヒト膵管腺がん(PDAC)のin vitroモデルは現在ほとんど存在しない。今回我々は、ヒト多能性幹細胞の膵外分泌部前駆体オルガノイドへの分化を誘導するための三次元培養条件を確立し、この前駆体オルガノイドからは培養下とin vivoで管状および腺房状構造が形成された。前駆体オルガノイドで変異KRASもしくは変異TP53を発現させると、変異特異的な表現型が培養下とin vivoで誘導された。TP53R175Hの発現で、SOX9の細胞質ゾル内局在が誘導された。TP53に変異のある患者腫瘍では、SOX9は細胞質にあって、死亡率と関連していた。我々はまた、摘出直後のPDACに由来する腫瘍オルガノイドのクローン生成のための培養条件も明らかにした。腫瘍オルガノイドは、初発PDACの分化状態や組織学的構造、表現型不均一性を維持し、低酸素状態や酸素消費量、エピジェネティックな標識、ヒストンメチルトランスフェラーゼEZH2の阻害に対する感受性の差異など、患者特異的な生理学的変化を保持していた。従って、膵臓前駆体オルガノイドおよび腫瘍オルガノイドは、PDACのモデル作製や高精度治療戦略を決めるための薬剤スクリーニングに使うことができる。

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