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白血病:KMT2Dの破壊は胚中心B細胞の発生を乱しリンパ腫形成を促進する

Nature Medicine 21, 10 doi: 10.1038/nm.3940

メチルトランスフェラーゼのKMT2D(別名MLL2)をコードする遺伝子の変異は、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)および濾胞性リンパ腫(FL)で非常に高い頻度で起こり、腫瘍形成の初期に生じることが多い。しかしながら、このような変異が機能に及ぼす影響とリンパ腫形成におけるその役割は明らかになっていない。今回我々は、FLおよびDLBCLに関連して見られるKMT2D変異がKMT2Dの酵素活性を障害し、胚中心(GC)B細胞およびDLBCL細胞で全体的なH3K4メチル化の低下をもたらすことを示す。B細胞発生早期にKmt2dを条件的欠失させると、マウスではGC B細胞が増加し、またB細胞増殖が亢進されるが、GC反応開始後の欠失ではこのようなことは起こらない。さらに、Bcl2を過剰発現しているマウスでKmt2dを遺伝学的に除去すると、ヒト腫瘍に似たGC由来リンパ腫の発生頻度が上昇する。これらの知見は、KMT2Dが腫瘍抑制遺伝子として作用していて、その早期の喪失ががん前駆細胞のエピジェネティックな全体像の再構築によりリンパ腫形成を促進することを示唆している。従ってKMT2D欠失細胞の根絶は、腫瘍形成の初期事象を標的とする合理的な方法となるかもしれない。

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