Article

神経変性疾患:ハンチントン病モデルでの異常なGluN3A発現の抑制はシナプスおよび行動の障害を救済する

Nature Medicine 19, 8 doi: 10.1038/nm.3246

ハンチントン病はハンチンチンタンパク質(HTT)のポリグルタミン反復配列伸長が原因だが、シナプス不全やニューロン喪失を引き起こす一連の病態生理学的事象は十分には解明されていない。また、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)型グルタミン酸受容体(NMDAR)の変化の関与が示唆されているが、HTT変異がNMDAR機能に影響を与える仕組みは明らかになっておらず、こうした因果関係に関する直接的な証拠はない。本論文では、変異型HTTが、GluN3Aサブユニットに特異的なエンドサイトーシス・アダプター分子であるPACSIN1の細胞内局在を破綻させることにより、GluN3Aサブユニットを含む幼若期NMDARを線条体ニューロン内部から表面に移動させることを示す。野生型マウス線条体でのGluN3Aの過剰発現は、ハンチントン病マウスモデルで観察されるシナプス喪失を模倣し、一方でGluN3Aの遺伝子欠失は、YAC128ハンチントン病マウスモデルで観察されるシナプス変性を防止し、運動機能低下および認知機能低下を改善し、線条体萎縮およびニューロン喪失を低減した。またGluN3A欠失は、ハンチントン病や他の神経変性疾患での細胞死と関連付けられているNMDAR電流異常上昇を改善した。我々の知見は、ハンチントン病におけるGluN3A調節異常の早期の病因的役割を明らかにするもので、また、GluN3Aあるいは病因に関わるHTT-PACSIN1の相互作用を標的とする治療が、ハンチントン病の進行を防止あるいは遅延させる可能性を示唆している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度