Letter

感染症:黄色ブドウ球菌のきわめて重要な毒素放出系

Nature Medicine 19, 3 doi: 10.1038/nm.3047

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)などの重要な細菌性病原体に広く抗生物質耐性が生じていることから、今までとは別の考え方による薬剤開発が必要とされるようになった。重要な毒性決定因子の阻害は、細菌感染の制御における有望な新手法と考えられている。フェノール可溶性モジュリン(PSM)は、病理発生に多数の重要な役割を持つペプチド毒素で、毒性の高い黄色ブドウ球菌の病気を引き起こす能力に大きな影響を及ぼす。しかし、PSMが多数存在し、かつ多様であることが、PSMを治療介入の標的とする際の障害となっている。今回我々は、これまで機能が不明であったATP結合カセット輸送体の1つが全てのPSMの放出にかかわっており、したがってPSM産生を完全に阻害するための共通の標的となることを報告する。この輸送体は、好中球溶解などの毒性表現型に強く影響し、黄色ブドウ球菌感染の進行に対する影響の大きさは全PSMの影響の総和と同程度である。この輸送体が細菌の増殖に不可欠であることは、特に重要である。さらにこの輸送体は、自身が分泌したPSMに対する細菌の免疫性、およびPSMが仲介する細菌干渉に対する防御にかかわっている。我々の結果は、重要な毒素の放出だけを専門に行う非典型的分泌機構を明らかにしており、この機構が病原性ブドウ球菌の増殖と毒性を効率的よく阻害する薬剤を開発するための包括的標的候補であることを示している。

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