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がん:AZIN1の再コード化RNA編集は肝細胞がんの素因を作る

Nature Medicine 19, 2 doi: 10.1038/nm.3043

ヒトの肝細胞がん(HCC)の発症機序について分子レベルでの解明を進めることは、腫瘍のイニシエーション事象発見を助けると考えられる。今回、トランスクリプトームの塩基配列解読から、AZIN1(antizyme inhibitor 1をコードする)のアデノシンをイノシンにする(A→I)RNA編集が、HCC標本で増加していることが明らかになった。AZIN1転写産物のA→I編集は、ADAR1(adenosine deaminase acting on RNA-1をコードする)により特異的に調節され、AZIN1の367番目の残基のセリンをグリシンへと置換する。この残基はβストランド 15(β15)内にあって、コンホメーション変化を起こすと予測され、またタンパク質の細胞質から核への移行を引き起こし、腫瘍形成能の増大と侵襲性のより高い機能獲得型表現型を付与する。編集型AZIN1は、野生型AZIN1タンパク質に比べてantizymeへの親和性が強く、その結果としてAZIN1タンパク質の安定性が高まり、antizymeによるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)とサイクリンD1(CCND1)の分解を中和することで、細胞増殖が促進される。以上のことから、AZIN1のA→I RNA編集は、ヒトのがん、特にHCCの発症機序におけるドライバーとなっている可能性がある。

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