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炎症:低温誘導性RNA結合タンパク質(CIRP)は出血性ショックや敗血症で炎症性応答を誘導する

Nature Medicine 19, 11 doi: 10.1038/nm.3368

出血性ショックや敗血症を起こしている患者では、全身的な炎症性応答が認められる。本論文では、出血性ショックで外科系集中治療室へ収容された患者の血液中では低温ショックタンパク質CIRP(cold-inducible RNA-binding protein)のレベルが上昇していることを報告する。出血や敗血症の動物モデルでは、心臓と肝臓でCIRP産生が上方制御されていて、CIRPは血流中に放出される。低酸素ストレス状況にあるマクロファージでは、CIRPは核から細胞質へ移行して分泌される。組換えCIRPタンパク質は、腫瘍壊死因子α(TNF-α)やHMGB1のマクロファージからの放出を促進し、in vivoで投与した場合には炎症性応答を誘導して組織傷害を引き起こす。出血によって引き起こされるTNF-αおよびHMGB1の分泌やマウスの致死率は、CIRP欠損マウスでは低下した。CIRPに対する抗血清を用いてCIRPの作用を阻害すると、出血や敗血症後の炎症性サイトカイン分泌や死亡率が低下した。細胞外CIRPの活性は、Toll様受容体4(TLR4)-MD2(myeloid differentiation factor 2)複合体によって仲介される。表面プラズモン共鳴解析によって、CIRPはTLR4-MD2複合体だけでなく、TLR4およびMD2と個々に結合することが分かった。ヒトCIRPの106番目から125番目のアミノ酸残基はMD2と高い親和性で結合する。したがって、CIRPはショックや敗血症における炎症性応答を促進するDAMP(損傷関連分子パターン)分子の1つである。

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