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免疫:細胞性免疫は、症候性のパンデミックインフルエンザに対する防御と相関する

Nature Medicine 19, 10 doi: 10.1038/nm.3350

ヒトでのインフルエンザ自然感染に対するヘテロサブタイプ防御におけるT細胞の役割についてははっきり分かっていない。2009年に起こったH1N1の世界的流行、すなわちH1N1パンデミック(pH1N1)は、交差反応性の細胞性免疫が、抗体を持たない個体での症候性感染を抑えるかどうかを調べるための極めてまれな自然実験となった。我々は、英国でのインフルエンザパンデミックの間に342名の健常成人を追跡し、pH1N1ウイルスや保存されたコアタンパク質エピトープに対する既存のT細胞の応答と、偶発的なpH1N1感染後の臨床転帰との間に相関を見いだした。症状が比較的軽かった患者では、保存されたCD8エピトープに対する既存のT細胞の存在頻度がより高かった。このような患者の症状に関する合計スコアは、IFN-γ(interferon-γ)+、IL-2(interleukin-2) CD8+ T細胞の存在頻度と強く逆相関していた(r=−0.6、P=0.004)。こうした機能を発揮するCD8+ IFN-γ+ IL-2細胞集団では、CD45RA+ CCR7(C-C chemokine receptor 7)の表現型を有する細胞が、症状スコアと逆相関しており、肺へのホーミング活性と細胞傷害性を持つことが分かった。交差反応性の中和抗体がない場合、保存されたウイルスエピトープに特異的なCD8+T細胞が、症候性のインフルエンザに対する交差防御と相関していた。このような防御免疫の相関関係は、どのインフルエンザウイルスにも対処しうるユニバーサルワクチン開発の指針となる可能性がある。

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