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糖尿病:低酸素とインスリンシグナル伝達間のPhd3を介したクロストークは、肝臓でのグルコースと脂質の代謝を調節し、糖尿病を軽減する

Nature Medicine 19, 10 doi: 10.1038/nm.3294

低酸素およびインスリンによって開始されるシグナル伝達は、細胞代謝を効果的に変化させる。低酸素誘導因子1α(Hif-1α)およびHif-2αのタンパク質安定性は、Phd(prolyl hydroxylase domain)含有タンパク質の3つのアイソフォームであるPhd1、Phd2およびPhd3によって調節される。Irs2(insulin receptor substrate-2)はインスリンの同化作用の重要なメディエーターで、その発現低下はインスリン抵抗性や糖尿病の病態生理の一因となる。Hifは多くの代謝経路を調節しているが、Phdタンパク質が肝臓でのグルコースおよび脂質の代謝を調節しているのかどうかは分かっていない。本論文では、肝臓でのPhd3(別名Egln3)の急性除去が、Hif-2αを特異的に安定化し、次いでIrs2転写とインスリン誘導性Akt活性化を増加させることで、インスリン感受性を改善し糖尿病を軽減することを示す。Hif-2αおよびIrs2のどちらの分子をノックダウンした場合も、Phd3ノックアウトが耐糖能とインスリン誘導性Aktリン酸化にもたらす有益な影響が消失するので、インスリン感受性の改善にはこの2つの分子の両方が必要である。Phd遺伝子をさまざまな組み合わせでノックアウトすることによりHif-2αレベルを上昇させても、肝臓での代謝にさらなる改善は見られず、毒性が加わるだけであった。したがって、Phd3のアイソフォーム特異的な阻害は、複数のPhdアイソフォームの慢性的な阻害が引き起こす毒性を生じさせることなく、2型糖尿病の治療に使えると考えられる。

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