Editorial

治癒という難問

Nature Medicine 18, 9 doi: 10.1038/nm.2951

この夏、ワシントンD. C. で開かれた第19回国際エイズ会議で、34人の研究者がHIV感染の治癒を目標とする計画を発足させた。エイズ患者のほとんどは、HAARTによってすでに普通の日常生活を送れるようになっている場合であってさえ、体内のウイルスが完全に排除される「治癒」の達成を望んでおり、HIV感染の治癒を狙う治療法は次々と考案されている。遺伝子治療、骨髄移植では有望な結果が得られているし、これらと感染細胞を殺してしまう治療用ワクチンなどを組み合わせるといった方法も提案されている。また、抗がん剤の1つのボリノスタットは潜在状態にあるHIVを再活性化して隠れ家から追い出す働きが明らかにされている。しかし、こうした方法を実際に臨床試験に持ち込む際のリスク、特に併用療法の場合の倍増しかねないリスクについては、規制側が慎重な取り扱いを保証する必要がある。治癒療法の臨床試験に参加する患者は、無論のこと、希望を抱いているだろう。規制を行う側と研究者はリスクが実際に存在することをはっきりさせ、過剰な期待を抑えさせなければいけない。

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