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幹細胞:脂肪酸酸化のPML−PPAR-δ経路は造血幹細胞の維持を調節する

Nature Medicine 18, 9 doi: 10.1038/nm.2882

幹細胞機能は非常に巧妙に調節されている過程である。これまで、幹細胞機能への代謝の寄与は、あまりよく解明されていない。今回我々は、造血幹細胞(HSC)を維持するための、これまでには知られていないPML(promyelocytic leukemia)–PPAR-δ(peroxisome proliferator-activated receptor δ–FAO(fatty-acid oxidation)経路を明らかにした。PPAR-δの欠失、あるいはミトコンドリアでのFAOの阻害がHSC維持の喪失を引き起こすことが見いだされ、一方、PPAR-δアゴニストでの処理によりHSC維持が増進した。PMLは、PPARシグナル伝達とFAOの調節を介して、HSC維持に重要な役割を果たしている。機構としては、PML–PPAR-δ–FAO経路はHSCの非対称分裂を制御する。PpardあるいはPmlの欠失は、FAOの阻害と同様に、対称分裂を介して2つのより分化した娘細胞を生じるSymmetric commitmentの増加をもたらすが、PPAR-δの活性化は非対称細胞分裂を増加させた。したがって、我々の知見は、HSCの細胞運命を制御する代謝スイッチを明らかにしており、これは治療と関連する可能性がある。

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