Technical Report

がん免疫療法:モノクローナルTCRを使った標的転換による腫瘍細胞殺滅

Nature Medicine 18, 6 doi: 10.1038/nm.2764

少数のがん患者では、T細胞免疫が悪性細胞を根絶して臨床的寛解に至る場合がある。しかし、がん患者の大部分では、T細胞受容体(TCR)が介在する特異的免疫認識や免疫活性化過程が起こらない。本論文では、免疫動員性抗がんモノクローナルTCR(immune-mobilizing monoclonal TCR against cancer:ImmTAC)と命名した新しい試薬の設計・作製と特性解析について報告する。作製した4種類のImmTACは、それぞれ異なる腫瘍関連エピトープ特異的モノクローナルTCRからなっていて、TCRはピコモル単位の親和性を持ち、ヒト化CD3特異的単鎖抗体フラグメントと融合させてある。これら4種類のImmTACは、T細胞の標的を効果的に転換させて、エピトープの細胞表面発現密度が非常に低いがん細胞を殺傷させた。さらに、これらの試薬はin vivoで腫瘍増殖を強く抑制した。したがってImmTACは、がんに対する免疫寛容を克服可能な、腫瘍免疫療法の新しい手法となる。

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