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アメーバ症:赤痢アメーバに対するハイスループット薬剤スクリーニングから同定された新しいリード化合物と標的

Nature Medicine 18, 6 doi: 10.1038/nm.2758

赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)は腸管寄生原虫で、ヒトのアメーバ症の原因である。アメーバ症は、原虫感染による死亡の原因としては世界で第4位、また罹患原因としては第3位であり、毎年ほぼ70,000人が死亡している。米国では、赤痢アメーバは国立衛生研究所によりバイオディフェンスにおける優先順位カテゴリーB病原体に分類されている。アメーバ症の治療はメトロニダゾールに依存しているが、この薬には副作用があり、また、赤痢アメーバがメトロニダゾールに耐性を持つ可能性が懸念されている。我々は、この嫌気性原虫に対する薬剤スクリーニングを容易にするために、自動化ハイスループットスクリーニングを開発し、有効性を実証した。このスクリーニングによって、米国食品医薬品局承認薬で関節リウマチの治療に使用されているオーラノフィンが培養赤痢アメーバに対して有効であることが突き止められた。オーラノフィンは赤痢アメーバに対してメトロニダゾールより10倍程度強力であった。転写プロファイリングおよびチオレドキシンレダクターゼについての測定から、オーラノフィンが赤痢アメーバのチオレドキシンレダクターゼを標的とし、チオレドキシンの還元を阻害して、活性酸素を介する殺作用に対する栄養型原虫の感受性を高めることが示唆された。アメーバ性大腸炎のマウスモデルおよびアメーバ性肝膿瘍のハムスターモデルでは、オーラノフィンの経口投与によって寄生虫の数、有害な宿主炎症応答および肝傷害が顕著に低下した。オーラノフィンのこの新規使用はアメーバ症の有望な治療法となり、オーラノフィンはFDAから希少疾病用医薬品に指定されている。

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