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がん:BIMの欠失多型は自然耐性の機序を介して、
がんにおけるチロシンキナーゼ阻害剤に
対する応答を低下させる

Nature Medicine 18, 4 doi: 10.1038/nm.2713

チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)は、慢性骨髄性白血病(CML)や上皮増殖因子受容体に変異がある非小細胞肺がん(EGFR NSCLC)などのキナーゼの変異が発がんの原因となる悪性腫瘍の患者で高い治療反応率を発揮する。しかし、これらの反応の程度や持続期間は不均一であることから、患者のTKIに対する反応に影響を与える遺伝的修飾因子の存在が考えられる。我々は、ペアドエンドDNA塩基配列解読法を用いて、BIM(BCL2-like 11)をコードする遺伝子のイントロン内に欠失多型を見いだした。BIMはタンパク質のBCL2(B-cell CLL/lymphoma 2)ファミリーに属するアポトーシス促進因子であり、キナーゼの変異が原因となるがんでのTKIによるアポトーシス誘導には、BIMの発現上昇が必要である。この多型によって、BIMのスプライシングがエキソン4からエキソン3に切りかわり、その結果としてアポトーシス促進的に作用するBH3(BCL2-homology domain 3)を欠失するBIMアイソフォームの発現が引き起こされる。この多型は、CMLおよびEGFR NSCLC細胞株にTKIに対する自然耐性(生まれ持って決まっている薬剤耐性または薬剤感受性)を付与するのに十分であったが、この耐性はBH3類似分子によって克服できた。この多型を持つCMLおよびEGFR NSCLC患者は、この多型を持たない患者に比べてTKIに対する反応が有意に低かった(CMLではP=0.02、EGFR NSCLCではP=0.027)ことは重要である。我々の結果は、TKIに対する反応の患者間での不均一性の説明となり、また、BIMの多型に関連するTKI耐性をBH3類似分子による個別化治療で克服できる可能性を示唆している。

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