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肝疾患:慢性肝疾患でマクロファージ由来Wntはノッチシグナル伝達に対抗して肝前駆細胞の運命を指定する

Nature Medicine 18, 4 doi: 10.1038/nm.2667

肝臓の慢性的傷害の際には、両能性の肝前駆細胞(HPC)の一部が活性化されて胆管細胞と肝細胞の両方を再生する。今回我々は、ヒトの疾患状態の肝臓およびマウスの細胆管反応モデルで、ノッチシグナル伝達およびWntシグナル伝達が、活性化された筋繊維芽細胞あるいはマクロファージとの相互作用を介して、HPCの細胞運命指定を方向付けることを示す。胆管再生中には、ノッチリガンドであるJagged 1の筋繊維芽細胞による発現がHPCでのノッチシグナル伝達を促進し、その結果、胆管への分化が指定されている細胞が胆管細胞になることが見いだされた。一方、肝細胞の再生中には、肝細胞残骸を貪食したマクロファージでWnt3a発現が誘導された。この結果、近傍のHPCで標準的なWntシグナル伝達が引き起こされ、これらの細胞内で細胞運命決定因子の1つであるNumbの発現が維持されるようになり、肝細胞への細胞運命指定が促進される。急性肝傷害中の成体における実質組織再生は、これらの2つの経路によって促進されている。

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