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骨疾患:骨芽細胞系譜細胞と破骨細胞前駆細胞間のWnt5a-Ror2シグナル伝達は破骨細胞形成を増強する

Nature Medicine 18, 3 doi: 10.1038/nm.2653

シグナル伝達分子Wntは、βカテニン依存的古典経路およびβカテニン非依存的非古典経路を介して骨の恒常性を調節している。Wnt古典的シグナル伝達経路の障害は、関節炎や骨粗鬆症で骨量減少を引き起こす。しかし、Wnt非古典的シグナル伝達が骨吸収を調節する仕組みは明らかではない。Wnt5aは、受容体型チロシンキナーゼ様オーファン受容体(Ror)を介して、Wnt非古典的シグナル伝達を活性化する。我々は、骨芽細胞系細胞と破骨細胞前駆細胞の間のWnt5a-Ror2シグナル伝達が、破骨細胞形成を増強することを示した。骨芽細胞系細胞はWnt5aを発現したが、破骨細胞前駆細胞はRor2を発現した。Wnt5aあるいはRor2を欠損するマウス、および破骨細胞前駆細胞特異的Ror2欠損マウスあるいは骨芽細胞系細胞特異的Wnt5a欠損マウスでは、破骨細胞形成が障害されていた。Wnt5a-Ror2シグナルは、JNKの活性化とRANK(receptor activator of nuclear factor-κB)をコードする遺伝子のプロモーターへのc-Junの動員によりRANK発現を増強し、これによってRANKL(RANK ligand)誘導性破骨細胞形成を増強する。可溶型Ror2は、Wnt5aのデコイ受容体として働き、マウス関節炎モデルにおける骨破壊を抑制した。我々の結果は、Wnt5a-Ror2経路が生理的および病的環境で破骨細胞形成にきわめて重要であり、関節炎などの骨疾患に対する治療標的となることを示唆している。

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