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繊維症:フォーカルアドヒージョンキナーゼは炎症性
シグナル伝達を介して機械力と皮膚繊維形成を結びつける

Nature Medicine 18, 1 doi: 10.1038/nm.2574

過剰な繊維増殖は外傷後によく見られる合併症の1つだが、その原因はまだよくわかっていない。創傷治癒の重要な構成成分でしばしば見逃されるものの1つは機械力で、これはフォーカルアドヒージョンキナーゼ(FAK)などのフォーカルアドヒージョンの細胞内構成成分を介して細胞−マトリックス相互作用を調節している。今回我々は、FAKは皮膚損傷の後に活性化され、この過程が機械力負荷によって増強されることを報告する。肥厚性瘢痕形成モデルで、繊維芽細胞特異的にFAKをノックアウトしたマウスは、炎症と繊維形成が対照マウスに比べてかなり少なくなる。FAKは、ERK(extracellular-related kinase)を介して作用し、ヒト繊維症と関連する強力なサイトカインのMCP-1(monocyte chemoattractant protein-1、別名CCL2)の分泌が機械力によって引き起こされる。MCP-1ノックアウトマウスでも同様に、ごく小さな瘢痕しか形成されず、このことはFAKによる機械的シグナル伝達が繊維形成を引き起こす際の主要機序が、炎症性ケモカイン経路であることを示している。ヒト細胞で、小型分子によりFAKを阻害するとこのような影響は遮断され、in vivoではMCP-1シグナル伝達および炎症性細胞動員の減弱により瘢痕形成が低下する。まとめると以上の結果は、物理的な力が、炎症性FAK−ERK−MCP-1経路を介して繊維化を調節していること、またFAKを標的とする分子戦略によって機械力と病的瘢痕形成をと効果的に切り離せることを示している。

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