Editorial

進むのはいいが、介入はいけない

Nature Medicine 17, 5 doi: 10.1038/nm0511-515

希少病であるファブリー病の治療薬ファブラザイムはジェンザイム社が発売しているが、生産ラインのウイルス汚染などのトラブルで生産・供給が遅れている。この薬剤を必要としている人たちにとっては、これは非常に悲惨なことだ。だが、ジェンザイム社の排他的権利をうち破ろうとして、「介入権」の実行を求めるのは、弊害のほうがずっと大きい。国費を原資として得られた特許権について、実用化のための措置がとられていなかった場合には、連邦政府がライセンスを許諾するように求めることができる介入権(march in right)は、実際に行使されたことはほとんどない。行使されたとしても、周辺技術やプロトコルはおそらくライセンスされないので、他の企業が薬剤生産を開始するまでには数年がかかる。もちろん、ジェンザイム社はもっと迅速に対処すべきなのだが、彼らが修理の費用を惜しんで時間がかかっているわけではない。もしNIH が介入法を行使するなら、ジェンザイムはこうした大きな費用がかかる厄介な問題から手を引き、ファブラザイム生産から撤退してしまうこともありうる。そして、これが介入権行使の前例となれば、製薬業界全体がこういう希少病治療薬の生産から手を引くことにもなりかねない。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度