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ハンチントン病:変異型ハンチンチンは、ミトコンドリアの分裂制
御にかかわるGTPアーゼのダイナミン関連タンパク質1に結合してその酵素活性を上昇させる

Nature Medicine 17, 3 doi: 10.1038/nm.2313

ハンチントン病は遺伝性で不治の神経変性疾患で、ハンチンチン(HTTにコードされる)中のポリグルタミン鎖(polyQ)の異常な伸長が原因である。polyQの長さは疾患の発症と重症度を決定しており、伸長が長いほど疾患の発症が早くなる。変異型ハンチンチンによって神経毒性が生じる機構はまだ解明されていないが、ミトコンドリアの機能不全はハンチントン病の発生病理における重要な事象となっている。本論文では、変異型ハンチンチンがミトコンドリアの分裂と融合のバランスを崩し、それによってニューロン損傷が引き起こされる可能性について検討した。ラット・ニューロンやハンチントン病患者の繊維芽細胞ではin vitroで、変異型ハンチンチンがミトコンドリア断片化を引き起こし、またハンチントン病のマウスモデルではin vivoで、神経学的な障害やハンチンチンの凝集がみられる前に、変異型ハンチンチンによる同様の断片化がみられることを示す。ハンチントン病のマウスや患者では、変異型ハンチンチンとミトコンドリアの分裂を制御するGTPアーゼのダイナミン関連タンパク質1(dynamin-related protein-1:DRP1)との間には異常な相互作用がみられ、それがDRP1の酵素活性を刺激する。変異型ハンチンチンによるミトコンドリア断片化、ミトコンドリアの順行性および逆行性の輸送の異常と神経細胞死はいずれも、優性ネガティブ型のDRP1 K38A変異体によってDRP1のGTPアーゼ活性を低下させると救済される。したがって、DRP1はハンチントン病の神経変性に対処するための新規治療標的となる可能性がある。

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