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がん:マイクロRNA miR-34aはCD44の直接抑制により前立腺がん幹細胞および転移を阻害する

Nature Medicine 17, 2 doi: 10.1038/nm.2284

がん幹細胞(CSC、がん源細胞とも呼ばれる)は、腫瘍の進行および転移にかかわる細胞である。マイクロRNA(miRNA)は、正常な幹細胞およびCSCの両方を調節しており、miRNA調節異常は腫瘍発生にかかわるとされている。乳房、膵臓、頭頸部、結腸、小腸、肝臓、胃、膀胱および卵巣のがんを始めとする多くの腫瘍で、CSCが接着分子CD44を単独で、あるいは他のマーカーと組み合わせて用いることにより同定されている。CD44+の細胞集団では、クローン原性、腫瘍発生能および転移能が増強された前立腺CSCが高頻度に認められるが、miRNAがCD44+前立腺がん細胞および前立腺がん転移を調節しているかどうかは明らかにされていない。今回我々は、p53の標的であるmiR-34aの発現が異種移植片および原発腫瘍から精製されたCD44+前立腺がん細胞では低下していることを、発現解析により明らかにする。粗製または精製CD44+前立腺がん細胞でmiR-34aを強制発現させると、クローン性増殖、腫瘍再生および転移が阻害された。これとは逆に、CD44前立腺がん細胞でmiR-34a antagomirを発現させると、腫瘍形成および転移が促進された。担がんマウスにmiR-34aを全身投与すると、前立腺がんの転移が抑制され、生存期間が延長された。我々はCD44がmiR-34aの直接的かつ機能的な標的であることを突き止め、前立腺がんの再生および転移の阻害という点で、CD44ノックダウンはmiR-34a過剰発現の表現型模写となることがわかった。今回の研究は、miR-34aがCD44+前立腺がん細胞のきわめて重要な負の調節因子であることを明らかにしており、miR-34aを前立腺CSCに対する新規治療薬として開発することの強力な論理的根拠を示している。

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