Letter

白血病:MSH2タンパク質の安定性を調節する
遺伝子群の体細胞性欠失はヒト白血病細胞でDNAミスマッチ修復不全および薬剤耐性を引き起こす

Nature Medicine 17, 10 doi: 10.1038/nm.2430

MSH2のようなDNAミスマッチ修復酵素はゲノムの完全性維持に働いており、これらの酵素の欠損によって、ヒトのいくつかのがんが起こりやすくなったり、薬剤耐性が生じやすくなったりする。我々は、新たに急性リンパ芽球性白血病と診断された小児のかなりの部分(約11%)で、白血病細胞中に野生型MSH2mRNAが多量に存在するにもかかわらず、MSH2タンパク質の量が少ないか、あるいは検出できないことを見いだした。MSH2タンパク質の量が少ない白血病細胞では、MSH2の分解調節にかかわる1個から4個の遺伝子(FRAP1(別名MTOR)、HERC1PRKCZおよびPIK3C2B)の部分的あるいは完全な体細胞性欠失がみられた。また、このような欠失は、成人急性リンパ芽球性白血病の患者(16%)および散発性結腸直腸がんの患者(13.5%)でも見られた。ヒト白血病細胞でこれらの遺伝子をノックダウンすると、MSH2タンパク質の分解増加によってMSH2タンパク質欠損が再現され、その結果DNAミスマッチ修復の大幅な低下とチオプリン系薬剤への耐性増加が生じた。これらの知見は、MSH2分解を調節する複数の遺伝子の体細胞性欠失が、白血病細胞でMSH2タンパク質量の検出不可能なほどの低下、DNAミスマッチ修復不全および薬剤耐性を引き起こすという、これまで知られていなかった機序を明らかにしている。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度