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がん:ヒトリンパ腫では内在性末端反復配列の脱抑制によって原がん遺伝子CSF1Rが活性化される

Nature Medicine 16, 5 doi: 10.1038/nm.2129

哺乳類ゲノムは、末端反復配列(LTR)などの多くの反復領域を含んでおり、それらは腫瘍形成に役割を果たすのではないかとずっと以前から疑われてきた。本論文では、形質転換したヒト細胞でのLTRの異常な活性化は、細胞系列に不適切な遺伝子発現の一因となり、そのような遺伝子発現が腫瘍細胞の生存に中心的役割を担うことの証拠を示す。B細胞由来ホジキンリンパ腫細胞は、非B細胞性で骨髄特異的な原がん遺伝子であるコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)の活性に依存していることがわかった。これらの細胞では、CSF1Rの転写はMaLRファミリーの異常に活性化された内在性LTR(THE1B)から開始される。MaLR LTRのTHE1サブファミリーの脱抑制はホジキンリンパ腫細胞ゲノムに広がっており、これはコリプレッサーであるCBFA2T3の発現喪失によるエピジェネティックな調節の異常に関連している。また、CSF1Rの発現異常が知られている未分化大細胞リンパ腫で、LTRによるCSF1Rの転写が見つかった。我々は、LTRの脱抑制はヒトリンパ腫の病因に関与していると結論する。この知見は、診断、予後および治療にかかわってくると考えられる。

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