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免疫:HIV特異的CD8+ T細胞の転写解析から明らかになった、BATF増加を介したPD-1によるT細胞機能阻害

Nature Medicine 16, 10 doi: 10.1038/nm.2232

HIVのようなウイルスの慢性的感染では、CD8+ T細胞はインターロイキン2 (IL-2)分泌の欠損や増殖能の低下などの、ひとまとめにして「疲弊(exhaustion)」と呼ばれる機能不全を起こす。疲弊したT細胞では、PD-1(programmed death-1)などの複数の抑制性受容体の発現量が増加し、これらはウイルス特異的T細胞機能障害の一因となる。したがって、PD-1による抑制の回復は好ましい治療戦略と考えられるが、PD-1へのリガンド結合がT細胞機能抑制につながる細胞機構は十分解明されていない。PD-1は、T細胞受容体シグナル伝達の減弱によってT細胞活性化を制限すると考えられている。PD-1が疲弊T細胞で機能を損なわせる遺伝子群の発現をも増加させるかどうかについては知られていない。今回我々は、HIV感染患者のHIV特異的CD8+ T細胞の遺伝子発現プロファイルを解析し、PD-1がヒトおよびマウス由来の疲弊CD8+ T細胞の遺伝子プログラムを協調的に上方調節することを示す。このプログラムには、AP-1ファミリーの転写因子であるBATF(basic leucine transcription factor, ATF-like)の発現増加が含まれる。BATFの強制発現はT細胞増殖とサイトカイン分泌を阻害するのに十分であり、BATFのノックダウンはPD-1による抑制を減弱させた。慢性的なウイルス血症の患者由来のT細胞でのBATFのサイレンシングは、HIV特異的T細胞の機能を回復させた。したがって、抑制性受容体は、T細胞機能を抑制するBATFのような遺伝子群の発現増加によってT細胞疲弊を引き起こす可能性がある。このような遺伝子群は、HIVに対するT細胞免疫を改善するための新たな治療機会をもたらすかもしれない。

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