Technical Report

がん:乳がんの骨転移におけるトランスフォーミング増殖因子βシグナル伝達の動態と治療反応の可視化

Nature Medicine 15, 8 doi: 10.1038/nm.1943

トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)経路は乳がんの転移に関係すると考えられているが、臓器特異的な転移におけるin vivoでの動態や時空間的関与についてはこれまで調べられていなかった。今回我々は、転移巣組織量とTGF-βシグナル伝達活性の両方をin vivoで追跡するために、TGF-β -SMADシグナル伝達経路の条件制御とデュアルルシフェラーゼレポーター系とを組み合わせた異種移植片モデル系を設計した。溶骨性の骨病巣にみられる強いTGF-βシグナル伝達は、TGF-β-SMAD経路の遺伝学的および薬理的な破壊によって直接的に、また、ビスホスホネートによる破骨細胞機能の阻害によって間接的に抑制された。特に、転移早期にTGF-βシグナル伝達を破壊すると転移組織量が大幅に減少したが、骨転移巣が十分に確立されている場合だとそうした有効性が弱まったことは注目される。TGF-βシグナル伝達をリアルタイムで操作・検出するためのこのin vivo系は、同様の戦略を用いて他の転移関連シグナル伝達経路のin vivo動態を解析するための原理証明であり、治療薬の開発や特性解析を促進するだろう。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度