Research Highlights

細胞:Wnt依存性の幹細胞ニッチ内で長期維持されるin vitroの腸上皮培養

Nature Medicine 15, 6 doi: 10.1038/nm.1951

腸上皮のin vitro解析はこれまで適した培養系がないことが障害となっていた。本論文では、気液界面と基本的間質構成要素を組み込んで、小腸および大腸を安定的かつ長期的に培養する手法を報告する。この培養で、腸上皮は増殖および多系列への分化を伴った器官様球状構造を形成しながら長期にわたって成長した。Wnt増殖因子ファミリーは、in vivoで腸上皮の増殖を正に制御する。これに一致して、培養の増殖はWntアンタゴニストであるDickkopf-1(Dkk1)によって阻害され、また、WntアゴニストであるR-spondin-1と免疫グロブリンFc(RSpo1-Fc)の融合したタンパク質によって顕著に促進された。さらに、γ-セクレターゼ阻害剤であるジベンザゼピンの投与は杯細胞への分化を、ニューロジェニン3の過剰発現は腸内分泌細胞への分化を誘導し、これは内在性Notchシグナル伝達の存在および系列可塑性と符合した。ロイシンリッチリピートを含むGタンパク質共役受容体5陽性(Lgr5+)系列と、Bリンパ腫モロニーマウス白血病ウイルス挿入領域ホモログ1陽性(Bmi1+)系列は、いずれも腸幹細胞(ISC)集団であると推定されているが、どちらの系列に由来する上皮細胞もin vitroで存在し、RSpo1-Fcの投与で増殖拡大した。RSpo1-Fc投与によるLgr5+細胞数のこのような増加はin vivoでも確認された。今回の結果は、WntおよびNotch依存性のISCニッチを正確に再現した微小環境内での腸の長期培養に成功したことを示している。

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