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肥満:Dok1はPPAR-γのリン酸化修飾を介して高脂肪食が誘導する脂肪細胞の肥大化と肥満を仲介する

Nature Medicine 14, 2 doi: 10.1038/nm1706

インスリン作用においてはIRS(insulin receptor substrate)-1とIRS-2が主要な役割を果たすが、Gab1、c-Cbl、SH2-BやAPSといった他のインスリン受容体キナーゼの基質もまた生理的意義を有している。Dok1(downstream of tyrosine kinases-1)と呼ばれるタンパク質はインスリンシグナルを伝達する複数の因子を結合するアダプター分子として機能することが知られているが、そのエネルギー恒常性における役割はいまだに明らかではない。今回我々は、Dok1が脂肪蓄積を制御することを報告する。高脂肪食で飼育したマウスでは、白色脂肪組織におけるDok1の発現が著しく増加していたが、一方でこのアダプターを欠損する脂肪細胞は小さく、高脂肪食に対する肥大応答が減弱していた。Dok1欠損マウスは野生型マウスに比べて痩せており、良好なグルコース耐性とインスリン感受性を示した。Dok1欠損マウスに由来する胚性繊維芽細胞は脂肪細胞への分化が損なわれており、このような障害にともなってプロテインキナーゼERKの活性上昇と、その結果として起こるPPAR(peroxisome proliferator-activated receptor)-γのSer112位のリン酸化の増強がみられた。PPAR-γの転写活性を負に調節するこのリン酸化部位の変異は、Dok1の欠損に起因する痩せの表現型の出現を妨げた。以上の結果は、Dok1が、PPAR-γに対するERKの抑制作用に拮抗することにより脂肪細胞の肥大化を促進し、食事誘発性肥満の素因をもたらす可能性を示している。

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