Letter

骨疾患:ex vivoでのCD44のグリカン操作による、ヒト多能性間葉系間質細胞輸送の骨への方向付け

Nature Medicine 14, 2 doi: 10.1038/nm1703

血液由来の細胞があらかじめ決まった解剖学的区画へ直接移動する(ホーミング)能力は、幹細胞を用いた組織工学やその他の細胞移入治療法に重要である。多能性間葉系間質細胞(MSC、間葉系幹細胞とも呼ばれる)は、全身性骨疾患の治療に使える可能性があるが、注入したMSCの骨指向性(osteotropism)が低いことから、臨床的有効性が制約される。骨への細胞の動員は、さまざまなリガンド上にあるシアロフコシル化された決定因子を認識するレクチンであるE-セレクチンを血管内に構成的に発現する特定の骨髄血管内で起こる。本論文では、ヒトのMSCはE-セレクチンリガンドは発現しないが、α-2,3シアリル化修飾体を持つグリコフォームのCD44を発現することを示す。我々はα-1,3-フコシル基転移酵素標品を用いて生細胞処理用の酵素条件下で、MSCが本来持つCD44のグリコフォームを造血細胞型のE-セレクチン/L-セレクチンリガンド(HCELL)に変換した。これにより、細胞の生存能力または多分化能に影響を与えることなくE-セレクチンへの強力な結合能が付与された。免疫不全(NOD/SCID)マウスの生体顕微鏡によるリアルタイム観察から、静脈内に注入したHCELL+MSCが注入後数時間以内に骨髄に浸潤し、続いて骨内膜に局在するまばらな細胞増殖巣とヒト類骨の産生が起こったことが示された。これらの知見は、CD44のHCELLグリコフォームが骨への指向性を与えることを実証し、個々の膜糖タンパク質上のグリカンの化学工学的変換により細胞輸送の方向付けを行うという、容易に変換可能な方法を明らかにしている。

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