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アレルギー:寄生性の糸状線虫が産生するES-62はFcεRIを介したマスト細胞の反応を抑制する

Nature Medicine 13, 11 doi: 10.1038/nm1654

アトピー性アレルギーはIgE抗体の増加が特徴であり、この抗体は高親和性Fcε受容体(FcεRI)を介してマスト細胞からの炎症メディエーター放出を誘発するシグナルとなる。理由は明らかではないが、先進国ではアレルギー性疾患の発症が近年急激に増加している。しかし、開発途上国では、広く存在する寄生虫によって非特異的なIgEが誘導されてIgEの濃度がしばしば大きく上昇しているにもかかわらず、こうした国ではアレルギー性疾患の増加が見られていない。本論文では、糸状線虫が分泌する分子であるES-62の性質に基づいて、この矛盾の説明を試みる。精製度が高く、内毒素を含まないES-62は、ホスホリパーゼDと共役したスフィンゴシンキナーゼを介するカルシウム動員およびNF-κBの活性化などの重要なシグナル伝達を選択的に遮断することにより、FcεRIが誘発するヒトマスト細胞からのアレルギーメディエーター放出を直接阻害することがわかった。ES-62は、Toll様受容体4と複合体を形成し、これがプロテインキナーゼC-α(PKC-α)を隔離することによって、阻害作用を仲介する。その結果、FcεRIとホスホリパーゼDの共役およびマスト細胞の活性化に重要な分子であるPKC-αのカベオラ/脂質ラフトを介したプロテアソーム非依存性分解が起こる。さらに、ES-62はマウスで皮膚と肺でのマスト細胞依存性の過敏症を起こりにくくすることから、アレルギーの新規治療薬となる可能性がある。

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