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胃疾患:コレステロールのグルコシル化がヘリコバクター・ピロリの免疫回避を促進する

Nature Medicine 12, 9 doi: 10.1038/nm1480

ヘリコバクター・ピロリ( Helicobacter pylori )による感染は潰瘍や癌腫などの胃の病変を引き起こす。H. pyloriはコレステロール栄養要求性であるため、感染時のH. pyloriによるコレステロール同化について調べた。本論文では、H. pyloriがコレステロール勾配にしたがって移動し上皮細胞の細胞膜からコレステロールを抽出してグルコシル化することを示す。過剰なコレステロールはマクロファージや樹状細胞などの抗原提示細胞によるH. pyloriの貪食を促し、抗原特異的なT細胞応答を増加させる。H. pylori投与中にコレステロールの豊富な食餌を与えると、胃中のH. pylori数はT細胞依存的に減少する。コレステロールの内在的なαグルコシル化はH. pyloriの貪食およびその後のT細胞の活性化を阻止する。また、コレステロールのグルコシル化を担うコレステロール-α-グルコシルトランスフェラーゼ酵素をコードする遺伝子がhp0421であることも明らかになった。hp0421を欠失したノックアウト変異体の作出により、in vivoでの貪食、T細胞の活性化および細菌除去からの回避にコレステリルグルコシドが重要であることが確証された。したがって、脂質のグルコシル化が免疫回避あるいは免疫応答へと局面を変化させるという、宿主・病原体間の相互作用を制御する機構が考えられる。

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