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痛覚:シナプスの足場タンパク質Homer1aによる慢性炎症性疼痛からの保護

Nature Medicine 12, 6 doi: 10.1038/nm1406

脊髄におけるグルタミン酸作動性のシグナル伝達および細胞内のカルシウム動員は、病理的な慢性疼痛と関係がある痛覚可塑性の発生にきわめて重要である。長型のHomerタンパク質は、シナプスのカルシウム流入および放出源にグルタミン酸作動性受容体を固定しているが、この作用は短型で活性依存性のスプライス変異型であるHomer1aと拮抗する。我々は、Homer1aが負のフィードバックループで作用し、活性依存的に疼痛経路の興奮性を制御することを示す。脊髄ニューロンでは、Homer1aは末梢の炎症の後にNMDA受容体に依存して迅速かつ選択的に発現が増加する。Homer1aはグルタミン酸受容体によって誘発されるMAPキナーゼの活性化とカルシウム動員を強く抑え、疼痛入力を処理する経路である脊髄ニューロン上のシナプス接続を低減する。マウスでshRNAを用いin vivoで活性誘発型のHomer1aの発現増加を阻害すると、炎症性疼痛が増悪する。したがって、グルタミン酸受容体の、細胞内シグナル伝達介在物質からの活性依存的な分離は、疼痛経路の第一番目の重大なシナプスにおける感作に拮抗するための新規の内在的な生理的作用機構である。さらに、in vivoで特定の脊髄分節へのHomer1aの選択的遺伝子導入により、炎症性の痛覚過敏の低減が見られた。Homer1の機能は疼痛可塑性に大きく関係しており、慢性炎症性疼痛治療のための有望な標的となると考えられる。

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