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ヒトインフルエンザA(H5N1)の致死性は、高いウイルス量と高サイトカイン血症に関連する

Nature Medicine 12, 10 doi: 10.1038/nm1477

鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルスは、ヒトで重度の症状を引き起こすが、その病原性の基盤は明らかになっていない。in vitroおよび動物での研究からは、ウイルスの高い複製能と播種性が疾患の病因として重要であることが示されている。実験では、ウイルスが誘発するサイトカイン調節異常が重症度に関係することが示唆されている。これらの知見とヒトでの症状との関連を検討するために、H5N1感染者18例およびヒトインフルエンザウイルス・サブタイプの感染者8例に対するウイルス学的および免疫学的研究を行った。ヒトへのインフルエンザH5N1の感染では、咽頭での高いウイルス量と、直腸および血液中にウイルスRNAがしばしば見いだされることが特徴である。血液中のウイルスRNAは、H5N1による死亡例でのみ認められ、咽頭のウイルス量の多さと関連があった。H5N1の感染患者では、特に死亡例において、末梢血Tリンパ球数が低く、またケモカインとサイトカイン濃度が高くなり、これらは咽頭のウイルス量増大と相関していた。H5N1ウイルスの遺伝的解析からは、哺乳類への適応と病原性獲得に関連してウイルスのポリメラーゼ複合体の変異が認められた。今回得られた知見は、高いウイルス量と、その結果起こる激しい炎症反応が、インフルエンザH5N1の主要な病因であることを示している。臨床管理では、早期診断と有効な抗ウイルス剤の投与により、この激しいサイトカイン応答の予防に焦点を合わせるべきであろう。

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