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免疫:単一培養由来で複数のウイルスに対する特異性をもつTリンパ球は免疫低下した個体で増加して臨床的な影響をもたらす

Nature Medicine 12, 10 doi: 10.1038/nm1475

免疫低下した個体は、生命にかかわる疾患、特にサイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)およびアデノウイルスによって引き起こされる疾患のリスクが高い。従来の治療は主としてCMVに対してのみ効果があり、また耐性が生じることが多い。CMVあるいはEBVに特異性をもつポリクローナルな細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の養子移入は有望と思われるが、この戦略を多数の血清型が存在するアデノウイルスに拡大適用できるかどうかは明らかではない。また、治療適格者ごとに該当するウイルスに対する特異的なCTL株を準備することは非実用的であろう。本論文では、単一の細胞培養から、CMV、EBVおよび複数の血清型のアデノウイルスに特異的なCD4+およびCD8+Tリンパ球群の生産を促すための抗原提示細胞株の遺伝的修飾について述べる。こうした単一のTリンパ球株を免疫低下した個体に投与すると、増殖して別々のウイルスに特異的な複数の集団を作りだし、臨床的に計測可能な抗ウイルス活性を示す。単一の細胞培養由来で複数の特異性をもつCTLの投与は、免疫低下した宿主でウイルス特異的な免疫を回復する安全で効率のよい手段となる可能性がある。

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