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血管新生:インターロイキン8の誘導はHIF-1α欠損結腸癌細胞における血管新生応答を持続させる

Nature Medicine 11, 9 doi: 10.1038/nm1294

低酸素誘導性因子1(HIF-1)は、低酸素に対する細胞応答に、血管新生を制御する遺伝子の調節を介してかかわる重要な因子であると考えられている。抗血管新生療法に対する臨床反応を示す数少ない腫瘍タイプの1つである結腸癌では、HIF-1はよい治療標的となる。しかし、HIF-1のみの阻害で、腫瘍の血管新生を遮断するのに十分かどうかは明らかでない。HIF-1αをノックダウンしたDLD-1結腸癌細胞(DLD-1HIF-kd)では、低酸素による血管内皮増殖因子(VEGF)の誘導は部分的にしか阻害されなかった。異種移植片は高度に血管が発達したままで、微小血管密度は野生型HIF-1αをもつDLD-1腫瘍(DLD-1HIF-wt)と同程度であった。DLD-1HIF-kd細胞では、低酸素によってVEGFの発現持続に加え、血管新生を促進するサイトカインであるインターロイキン(IL)8が誘導されたが、DLD-1HIF-wt細胞ではこうした誘導が起こらなかった。この誘導は過酸化水素の産生とそれに続くNF-κBの活性化を介して起こった。さらに、結腸癌で変異していることが多い癌遺伝子であるKRASは、低酸素によるIL-8の誘導を促進した。IL-8の中和抗体は、DLD-1HIF-kd異種移植片における血管新生と腫瘍成長を抑制したが、DLD1HIF-wtではこれらは見られず、このIL-8応答の機能的な重要性が実証された。したがって、腫瘍の血管新生応答を持続させるためには代償的な経路が活性化されることがあり、HIF-1αを阻害する戦略は、IL-8を同時に標的とする場合に最も効果的であろうと考えられる。

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