Article

酵素:アンギオテンシン変換酵素は受精に際して重要な役割を担うGPIアンカー型タンパク質遊離因子である

Nature Medicine 11, 2 doi: 10.1038/fake58

アンギオテンシン変換酵素(ACE)は、血圧に関する重要な調節因子である。この酵素はアンギオテンシンIおよびブラジキニンなどの小型のペプチドを切断してその生物学的活性を変化させ、血圧を上昇させることが知られている。本論文では、ACEのもつ新しい活性であるグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型タンパク質遊離活性(GPIアーゼ活性)について報告する。ACEのGPIアーゼ活性は、そのペプチダーゼ活性とは異なり、堅く結合するACE阻害剤による阻害は弱く、ペプチダーゼ活性に必要なコアアミノ酸残基を置換しても不活性化されないので、GPIアーゼとしての活性部位のエレメントはペプチダーゼ活性部位のものとは異なると考えられる。ACEは種々のGPIアンカー型タンパク質を細胞表面から遊離させるが、この過程は脂質ラフト攪乱物質であるフィリピンによって促進される。遊離したタンパク質にはGPIアンカー部分が含まれるので、切断はGPI部分内部で起こることが示唆される。高速液体クロマトグラフィー質量分析計を用いてさらに解析した結果、切断部位はマンノース-マンノース結合箇所であると予測された。TESP5およびPH-20などのGPIアンカー型タンパク質は、野生型マウスでは精子膜から遊離されるが、Aceをノックアウトした精子では遊離されない。さらに、ペプチダーゼを不活性化したE414D変異ACEおよびPI-PLCは、ACEノックアウト精子の卵への付着障害を救済することから、ACEはこの活性を介して受精の際に重要な役割を果たしていることが示される。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度