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組織プラスミノーゲンアクチベーターの神経血管毒性は活性化プロテインCで抑えられる

Nature Medicine 10, 12 doi: 10.1038/nm1122

組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)の血栓溶解作用は有用だが、その神経毒性には問題が多い。本論文では、tPAが虚血ヒト脳内皮で、またN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)で処理したマウス皮質ニューロンで、アポトーシス経路をカスパーゼ9からカスパーゼ8へ移行させてアポトーシスを増強することを報告する。この変更により、Bidが関与するミトコンドリア経路の増幅なしにカスパーゼ3が直接活性化される。in vivoでは、マウスのtPA誘導型の脳虚血性傷害は、カスパーゼ8阻害物質を脳室内投与すると軽減したが、カスパーゼ9阻害物質では軽減されなかった。これに対して対照マウスでは、カスパーゼ9阻害物質は保護作用を示したが、カスパーゼ8阻害物質では保護作用が認められなかった。活性化プロテインC(APC)は、抗凝固、抗炎症、抗アポトーシス活性をもつセリンプロテアーゼで、一過性虚血時に神経保護作用があり、内皮およびニューロンに直接はたらきかけて脳細胞での抗アポトーシス機構の活性化を促すが、tPAの血管および神経毒性をin vitroおよびin vivoで遮断した。APCは、内皮でtPAが誘導するカスパーゼ8によるカスパーゼ3の活性化、NMDA処理したニューロンでのアポトーシス誘導因子のカスパーゼ3に依存する核移行を阻害し、またマウスではtPAが関わる脳虚血性傷害を軽減した。この結果は、tPAがストレスのかかった脳細胞でアポトーシス信号を内因系経路から、カスパーゼ8を必要とする外因系経路へ移行させることを示している。APCは、tPAの神経血管毒性を遮断し、脳卒中のtPA療法の有効性を相当度高める可能性がある。

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