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マウスで脂肪組織特異的にPtenを抑制すると、インスリン感受性、エネルギー消費、熱産生が増大する

Nature Medicine 10, 11 doi: 10.1038/nm1117

Ptenはホスファチジルイノシトール3-リン酸/Akt経路を抑制する、重要なホスファターゼである。今回、新たに作られたAcdcプロモーター作動性Creトランスジェニックマウスを用いて、脂肪組織特異的にPtenを欠損する(AdipoPten-KO)マウスを作出した。AdipoPten-KOマウスは、過食症状を示すにもかかわらず体重および脂肪組織重量が少なく、脂肪組織におけるAktのリン酸化反応の誘導をともなうインスリン感受性が増大していた。AdipoPten-KOマウスではまた、著しい高体温、脂肪組織でのミトコンドリア増殖をともなったエネルギー消費の増加がみられた。これらは、p53の大幅な減少、Rbの不活性化、サイクリックAMP応答配列結合タンパク質(CREB)のリン酸化、そしてペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γコアクチベーター1αをコードするPpargc1a発現の増加と関連していた。生理学的には、脂肪組織のPten mRNAは寒冷暴露により減少、肥満により増加し、こうした増減はミトコンドリア生成に関わるmRNAの変化と結びつけられた。今回の結果は、脂肪組織のPten発現の変化が、インスリン感受性やエネルギー消費を調節している可能性を示唆している。脂肪組織のPtenの抑制は、2型糖尿病や肥満の有効な治療戦略となると思われる。

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