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ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体δの心筋細胞に限った欠損は心筋における脂肪酸酸化に影響を与え心筋症を誘発する

Nature Medicine 10, 11 doi: 10.1038/nm1116

脂肪酸酸化(FAO)は、心臓のエネルギー必要量を満たす主要エネルギー源である。ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体δ(PPAR-δ)はFAOに重要な役割を果たしている可能性がある。しかしPPAR-δが、心筋でのFAOの基本的レベルの維持に必要かどうかはまだわかっていない。本論文では、マウスでcre-loxP法によりPPAR-δを心筋に限って欠損させたところ、FAOにかかわる重要な遺伝子群の構成性発現が抑制され、心筋におけるFAOの基本的レベルが低下したことを報告する。このようなマウスでは心機能不全、心筋における進行性の脂質集積、心臓肥大、うっ血性心不全がみられ、生存率は低くなった。したがって、心筋におけるPPAR-δの慢性的欠損は、脂質毒性による心筋症につながる。これらのデータを総合すると、PPAR-δは心筋における構成的なFAOの重要な決定因子であり、エネルギー収支の維持と正常な心機能に必要なことがわかる。PPAR-δは、脂質毒性による心筋症をはじめとする心疾患の治療標的となる可能性がある。

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