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心筋線維化:ヒト心臓における心筋間質の線維化の遺伝学的性質と疾患との関連

Nature Genetics 55, 5 doi: 10.1038/s41588-023-01371-5

心筋間質の線維化は、心血管疾患や予後不良に関連している。本論文では、ヒト心臓の線維化を生じさせる生物学的経路を調べるために、英国バイオバンクの参加者で心臓の磁気共鳴画像法を受けた4万1505人について、心筋線維化のマーカーである心筋のネイティブT1値(緩和時間)を測定する機械学習モデルを開発した。T1値の延長は、糖尿病、腎疾患、大動脈弁狭窄症、心筋症、心不全、心房細動、心伝導刺激系障害、関節リウマチと関連していた。ゲノムワイド関連解析によって、T1値に関連する独立した11座位が見つかった。見つかった座位から、次のことに関与する遺伝子が示された。グルコース輸送(SLC2A12)、鉄恒常性(HFETMPRSS6)、組織修復(ADAMTSL1VEGFC)、酸化ストレス(SOD2)、心肥大(MYH7B)、カルシウムシグナル伝達(CAMK2D)である。心臓の線維芽細胞のトランスフォーミング増殖因子β1(TGF-β)を介した活性化アッセイにより、11座位のうち9座位は、TGF-β刺激によって発現あるいはクロマチンコンホメーションの開状態が時間的に変化する遺伝子群で構成されていることが分かり、これらの遺伝子が心筋線維芽細胞という状態の獲得に生物学的に関わっていることが裏付けられた。我々は心臓の画像データを用いた機械学習によって心筋間質の線維化の大規模な定量化を行うことで、心臓線維化と疾患の関連を検証し、線維化の基盤となる新しい生物学的関連経路を明らかにした。

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