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シロイヌナズナ:シロイヌナズナの雄性配偶体に見られる特徴的なクロマチンシグネチャー

Nature Genetics 55, 4 doi: 10.1038/s41588-023-01329-7

生殖細胞系列におけるエピジェネティック修飾のリプログラミングは、哺乳類においては継世代エピジェネティック遺伝の消去に寄与するが、植物におけるその特性は十分に解明されていない。本論文で我々は、シロイヌナズナの雄性生殖細胞系列の発生過程におけるヒストン修飾のプロファイリングを行った。精細胞には広範に二価クロマチンが見られ、それら二価クロマチンは、既存のH3K4me3領域へのH3K27me3の獲得、あるいはH3K27me3領域へのH3K4me3の獲得により形成される。これらの二価ドメインは特異的な転写状況に関連していた。体細胞に見られるH3K27me3は精子では全体的に減少しているが、H3K27me3の顕著な減少が観察された発生関連遺伝子は700個ほどにとどまっていた。植物の精細胞がヒストンバリアントH3.10(植物精細胞特異的なヒストンバリアント)を取り込むことは、体細胞でのH3K27me3修飾再編成に大きな影響を与えることなく、精子核クロマチンのアイデンティティ確立を容易にする。栄養核では、転写が抑制されている遺伝子群に何千もの特異的H3K27me3ドメインが見られ、一方、受粉に関連する遺伝子群は高度に発現し、転写領域内にH3K4me3修飾を持つことを特徴としていた。本研究は、二価クロマチンの存在を推定するとともに、H3K27me3の再設定が発生に関わる制御因子に限定されていることが、多能性を持つ植物精細胞の重要な特徴であることを示している。

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