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遺伝子編集:ヒトの遺伝学的多様性は治療用遺伝子編集のオフターゲット効果を変更する

Nature Genetics 55, 1 doi: 10.1038/s41588-022-01257-y

CRISPR遺伝子編集は、体細胞のDNA塩基配列を修正するという疾患治療法として大きな可能性を秘めている。しかし、オフターゲット効果の可能性を予測する際の標準的な計算手法や生化学的手法で用いられているのは、主に参照ゲノムである。今回我々は、一塩基多型(SNP)と挿入欠失(インデル)遺伝的バリアントを考慮してオフターゲット部位の候補選定とその優先付けを行うCRISPRmeという効果的なツールを開発した。我々は、鎌状赤血球症とβサラセミアの臨床試験で有望であることが示されたBCL11Aエンハンサーを標的とするガイドRNA(gRNA)を用いて、このソフトウエアを検証した。その結果、最上位のオフターゲット候補は、アフリカ系集団でありふれた対立遺伝子(MAF 4.5%)がPAM(protospacer adjacent motif)塩基配列をもたらすことで生じた。SpCas9は、CD34+造血幹・前駆細胞(HSPC)において、対立遺伝子特異的なインデルとセントロメアを挟む逆位を必ず生成するが、高忠実度Cas9ではこのオフターゲット効果が軽減された。この報告は、遺伝子編集の効果の修飾因子として遺伝的バリアントを考慮すべき理由を示している。バリアントを考慮したオフターゲット効果の評価が、治療用ゲノム編集の評価に不可欠なものとなり、包括的なオフターゲット候補の選定に強力な手法となると期待される。

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