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寿命:食餌ストレスが非近交系ショウジョウバエの寿命多様性の遺伝的構造を変化させる

Nature Genetics 55, 1 doi: 10.1038/s41588-022-01246-1

進化論の考え方では寿命を短縮させる対立遺伝子は遺伝子プールから排除されるはずだが、数十年にわたるゲノムワイド関連研究とモデル生物研究により、そのような対立遺伝子も存在し続けていることが分かっている。1つの可能性として、寿命を制御する対立遺伝子は、ある特定の環境下でのみ働くと仮定することができる。本研究では、非近交系ショウジョウバエを対照食または高糖質食に曝露し、1万匹以上の成虫の遺伝子型を経時的に決定して、成虫寿命の間に生じる対立遺伝子頻度の変化を追跡した。その結果、若齢時と老齢時での効果が逆方向(トレードオフ)の対立遺伝子、老齢時になってから効果を発揮する対立遺伝子、遺伝子型と環境要因の交互作用に関係している対立遺伝子など、何千もの寿命関連対立遺伝子を同定した。注目すべきことに、寿命に関連する遺伝的多様性の3分の1は、環境依存的な影響を寿命に対して及ぼしていた。また、寿命を短縮させる対立遺伝子は最近になって生じたものが多く、高糖質食による飼育下でより強い効果を及ぼすこと、進化のミスマッチ仮説と一致して野生のショウジョウバエ集団で選択を受けている証拠があることを見いだした。これらの結果は、寿命多様性の高度に多遺伝子的で環境要因の影響を受ける遺伝的構造と、この重要な形質を形作ってきた進化の過程に関する知見を提供するものである。

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