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がん:YAPは肝臓の増殖と腫瘍発生においてTET1を介したエピジェネティックリモデリングによる発がん性転写プログラムを誘導する

Nature Genetics 54, 8 doi: 10.1038/s41588-022-01119-7

エピジェネティックリモデリングは、がん遺伝子によって誘導される細胞の形質転換と悪性腫瘍化に不可欠である。ヒストンの翻訳後修飾とは対照的に、DNAメチル化が発がん性シグナル伝達によりどのようにリモデリングされるのかは、ほとんど分かっていない。発がんタンパク質のYAPは、Hippoシグナル伝達を仲介するTEAD転写因子のコアクチベーターであり、ヒトのがんで広く活性化されている。今回我々は、5-メチルシトシンジオキシゲナーゼTET1がYAPの直接の標的であり、肝臓でYAP標的遺伝子のエピジェネティックおよび転写の再プログラム化をゲノム規模で調整するマスター調節因子であることを明らかにした。YAPの活性化はTET1の発現を誘導し、TET1はTEADと物理的に相互作用して、YAP標的遺伝子における局所的なDNA脱メチル化、ヒストンH3K27アセチル化、オープンクロマチン化を引き起こし、転写活性化を促進する。TET1を喪失させると、YAP誘導性のエピジェネティック変化や転写変化が反転しただけでなく、YAP誘導性の肝腫大と腫瘍発生も抑制された。これらの知見は、発がん性シグナル伝達がDNA脱メチル化の部位特異性を調節して腫瘍発生を促す仕組みを例示するとともに、生理的条件下や疾患においてTET1がYAPシグナル伝達を調節するための潜在的な標的であることを示している。

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