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鎌状赤血球症:胎児型ヘモグロビンの発現を制御するDNA調節配列の単一塩基レベルでのマッピング

Nature Genetics 53, 6 doi: 10.1038/s41588-021-00861-8

機能的な非コードDNA塩基配列を特定して、健康に関係する形質への関与を明らかにすることは、現代の遺伝学の主要な課題である。本論文では、赤血球系での胎児型ヘモグロビン(HbF)の発現を制御する4つの座位における非コードDNAの機能を、単一塩基の分解能でマッピングするためのハイスループットな枠組みを開発した。HbFの発現は、鎌状赤血球症(SCD)の表現型を変化させる遺伝的に決定された形質である。具体的には、アデニン塩基エディターABEmaxを用いて、307の予測調節配列において、1万156の個別のA•TをG•Cに変換し、赤血球系でのHbF発現に及ぼす影響を定量化した。その結果、多数の調節配列を特定して、それらのエピゲノム構造を明らかにし、またそれらを、1つのSCDコホートでのHbF発現に関連する複数の低頻度バリアントに結び付けることができた。SCDドナーのCD34+造血前駆細胞において、γ-グロビン遺伝子の新たに発見されたリプレッサー配列を標的とすると、赤血球系子孫細胞でのHbFレベルが上昇し、低酸素誘発性の鎌状赤血球化が抑制された。我々の知見から、HbF調節のこれまで認識されていなかった遺伝的複雑さが明らかになり、SCDを治療するための有望な手掛かりが得られた。

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