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リンパ腫:末梢性T細胞リンパ腫において高頻度で見つかるエピジェネティックな制御因子の変異、RHOA変異、FYNキナーゼの変異

Nature Genetics 46, 2 doi: 10.1038/ng.2873

末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)は一様ではなく、非ホジキンリンパ腫の中で不明なところが多い疾患である。本論文では、腫瘍DNAと正常DNAのペア12種類について、全エキソーム塩基配列決定、RNA塩基配列決定解析、特定のゲノム領域に対するディープシーケンシング(高読取り深度の塩基配列決定)を併せて行い、PTCLの形質転換において生じる新たな遺伝子変化を同定した。その結果、極めて高頻度に認められるエピジェネティックな制御因子の変異をTET2DNMT3AIDH2に同定した。同時に、p.Gly17Valの変化が生じた、非常に一般的なRHOAの変異を新たに同定した。この変異の存在は、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)の35標本のうち22(67%)に、PTCL(非特異型PTCL:PTCL-NOS)の44標本のうち8(18%)に認められた。機序という点から見ると、Gly17Val変異型のRHOAタンパク質の生化学的分析および細胞レベルの解析を行ったところ、RHOAシグナル伝達が阻害されていた。おそらくは活性型グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)タンパク質によるGTPの取り込みが抑制される結果と考えられる。さらに、新規の、頻繁というほどではないが高頻度で見つかる、FYNATMB2MCD58に存在する遺伝子異常について述べる。この知見は、PTCLの発症機序におけるSRCシグナル伝達、DNA損傷に対する応答の異常、免疫監視機構の回避の関与を示唆するものである。

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