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エピジェネティクス:リンチ症候群家系でのMSH2の遺伝性の体細胞メチル化による不活化はTACSTD1の3'側に位置するエキソンの欠失が原因である

Nature Genetics 41, 1 doi: 10.1038/ng.283

リンチ症候群患者では、MSH2をはじめとするミスマッチ修復遺伝子に生殖細胞系列での不活化変異が存在するため、結腸直腸がんおよび子宮内膜がんに感受性を示す。本論文では、MSH2欠損腫瘍がみられるオランダおよび中国の家系の患者は、MSH2のすぐ上流に位置し、Ep-CAMをコードする遺伝子TACSTD1に欠失があることを報告する。この欠失は、TACSTD1の後方部分のエキソンにあり、生殖細胞系列性でヘテロ接合である。このような欠失のため、TACSTD1の転写はMSH2まで伸長して起ることになる。この欠失があった場合、シスに位置するMSH2プロモーターは、Ep-CAMが陽性の場合にメチル化されるが、Ep-CAMが陰性の正常組織の場合はメチル化されないことから、TACSTD1の変異対立遺伝子の活性と、対応するMSH2対立遺伝子のエピジェネティックな不活化の間に相関があることがわかる。隣接する遺伝子まで読み過ごし転写がおこることによる遺伝子のサイレンシングは、本論文で示したようなセンス鎖の方向であれ、あるいはアンチセンス鎖の方向であれ、変異が疾患を引き起こす一般的な機構の説明となりうる。このような機構が、正常なポリアデニル化シグナルを欠く隣接遺伝子の発現パターン依存的に、エピジェネティックな不活化を一般的パターンあるいはモザイクパターンのどちらかで引き起こすのかもしれない。

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