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CASTによるヒト細胞での二本鎖切断を生じない選択的なDNA組み込み

Nature Biotechnology 42, 1 doi: 10.1038/s41587-023-01748-1

CRISPR–Cas9による従来のゲノム工学的手法では二本鎖切断(DSB)が生じるため、望ましくない副産物が発生し、生成物の純度が低下する。本論文では、I-F型CAST(CRISPR-associated transposase)を用いてDSBの生成を回避してヒト細胞で大型DNA塩基配列のプログラム可能な組み込みを行う方法を紹介する。我々は、タンパク質の設計によってQCascade複合体によるDNAの標的化を最適化し、QCascadeが標的とするゲノム部位へのAAA+ ATPアーゼTnsCの多価動員を利用することによって強力な転写活性化因子を開発した。プラスミドを基盤とする組み込みを最初に検出した後、さまざまな細菌宿主に由来する新たな15のCAST系のスクリーニングを行い、高い活性を示すシュードアルテロモナス属(Pseudoalteromonas)由来のホモログを発見して、組み込み効率をさらに高めた。最後に我々は、細菌のClpXが、おそらくMu転位での既知の役割に似た組み込み後のCAST複合体の能動的解離の促進により、ゲノム組み込みを数桁増強することを発見した。今回の研究は、複雑な多成分の装置をヒト細胞内で再構成できることを明らかにするとともに、CASTを真核生物のゲノム工学に利用するための強力な基盤を確立した。

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