Article

Strand-seqによる単一細胞の構造バリアントの機能解析

Nature Biotechnology 41, 6 doi: 10.1038/s41587-022-01551-4

体細胞の構造バリアント(SV)はがんに広く存在するが、その機能的影響を直接明らかにする方法が存在しないため、それらが疾患の進行に及ぼす影響の研究は進んでいない。本論文では、Strand-seqを使用し、ヌクレオソーム占有率を用いて遺伝子発現を読み出し情報として推測することで、単一細胞のSV発見と分子表現型判定のハプロタイプを考慮した統合を行うコンピューター解析法であるscNOVAを紹介する。白血病と細胞株に応用したところ、コピー数均衡型再配列が遺伝子の脱制御に及ぼす局所的な影響と、SVがサブクローンの異常なシグナル伝達経路に及ぼす影響が明らかになった。慢性リンパ性白血病患者では、Wntシグナル伝達の調節不全を示す明確なSVサブクローンが発見された。また、T細胞性急性リンパ芽球性白血病では、サブクローン性の染色体粉砕(クロモスリプシス)の影響が明らかにされ、c-Mybの活性化と未発達な細胞状態の増加が見いだされて、情報に基づきNotch阻害物質を使用して培養細胞のサブクローンを狙い通りに標的化できることが示された。scNOVAは、SVをその機能的影響と直接結び付けることにより、不均質な細胞集団が持つ構造多様性に関する系統的な単一細胞マルチオーム研究を可能にする。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度