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薬物の作用機序の全プロテオームアトラス

Nature Biotechnology 41, 6 doi: 10.1038/s41587-022-01539-0

薬物に対する細胞の応答を明らかにすることは、摂動を誘発する低分子(perturbagen)の作用機序の解明に極めて重要である。今回我々は、96穴プレートに基づく定量プロテオミクス用のハイスループットスクリーニングの基盤を開発し、ほぼ全プロテオーム的な範囲にわたりヒトがん細胞株で875化合物のプロファイルを評価した。プロテオームの24時間変化を解析したところ、リガンド誘発性の変化がタンパク質発現に見いだされるとともに、化合物が標的タンパク質を調節する規則が明らかになり、ジヒドロ葉酸還元酵素とタンキラーゼの阻害物質と推定される分子が発見された。タンパク質同士および化合物同士の相関ネットワークを用いることにより、アドレナリン受容体のアンタゴニストJP1302をはじめとする複数の化合物の作用機序が明らかになり、JP1302はFACT複合体を阻害してヒストンH1を分解することが示された。広大な化合物空間にわたって標的が重複する多数の化合物のプロファイルを明らかにすることにより、化合物の構造と作用機序が関連付けられ、ライブラリー内の分子のオフターゲット多重薬理が明らかになった。

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