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CD64を過剰発現させて抗体を介した殺傷から細胞治療薬を保護する

Nature Biotechnology 41, 5 doi: 10.1038/s41587-022-01540-7

がん治療や再生医療に用いられる同種細胞治療薬は、抗体を介した殺傷に弱く、その効果が低下する。本論文では、IgG受容体CD64を人工的に過剰発現させることによって抗体を介した殺傷から細胞を保護する方法を紹介する。我々は、in vitroと抗体依存性細胞傷害(ADCC)が起こるマウスで、CD64を過剰発現するヒトとマウスのiPS細胞由来の内皮細胞(iEC)が、IgG抗体によるADCCと補体依存性細胞傷害を免れることを示した。細胞性免疫を防ぐことが知られている低免疫遺伝子操作をCD64発現と組み合わせると、B2M−/−CIITA−/−CD47/CD64トランスジェニックiECは、in vitroとヒト化マウスで、IgG抗体による殺傷にも細胞性免疫による殺傷にも抵抗性を示した。機構研究により、CD64またはその細胞内切断型アナログCD64tが単量体IgGを効果的に捕捉してそのFcを占有し、そのIgGが標的抗原に結合してそれを占有することが示された。この方法の3つの応用例として、CD64tを導入したヒト甲状腺上皮細胞、膵臓β細胞、CAR T細胞は、移植細胞に対する臨床的に意味のあるレベルの抗体に耐え、抗体を介した殺傷を十分に免れた。

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