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血漿無細胞ヌクレオソームのChIP-seqが起源細胞の遺伝子発現プログラムを明らかにする

Nature Biotechnology 39, 5 doi: 10.1038/s41587-020-00775-6

ヒト血漿中の無細胞DNA(cfDNA)からは、それが由来する臓器または腫瘍の病理過程に関する分子情報が得られる。こうしたDNA断片は死に向かう細胞の断片化したクロマチンに由来し、起源細胞のヒストン修飾がある程度保持されている。本研究では、ヒト検体268点を対象に、活性クロマチン修飾を保持する無細胞ヌクレオソームのクロマチン免疫沈降を行って塩基配列を解読した(cfChIP-seq)。健常ドナーでは、cfDNAプールへの寄与が大きかったのは骨髄巨核球であり、赤芽球ではなかった。各種肝疾患患者では、肝細胞転写プログラムの病理関連の変化が確認可能であることが分かった。転移大腸がん患者では、転写活性を有するヒト上皮成長因子受容体2(HER2)の増幅など、臨床上意味のある患者特有の情報が得られた。総合すると、cfChIP-seqは、低い塩基配列解読深度で全身のゲノム規模の情報を提供し、診断に有益な情報をもたらすとともに血液検体を用いた生理・病理過程の検討に役立ち得る。

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