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血友病AのイヌのAAV遺伝子治療に関する長期試験が形質導入肝細胞のクローン性増殖を明らかにする

Nature Biotechnology 39, 1 doi: 10.1038/s41587-020-0741-7

我々は、血友病Aのイヌ9頭にアデノ随伴ウイルス(AVV)遺伝子治療を行い、最長10年にわたって追跡した。イヌの第VIII因子を発現するAAV8ベクターまたはAAV9ベクター(AAV-cFVIII)を投与すると、FVIII欠乏は正常なFVIIIレベルの1.9~11.3%まで改善された。9頭のうち2頭では、FVIIIの活性レベルが処置の約4年後から徐々に上昇した。腫瘍または肝機能変化の証拠はどのイヌにも認められなかった。治療したイヌ6頭の肝試料で組み込み部位を分析したところ、ゲノムDNAにおける重複のないAAV組み込み事象1741件と、5頭での増殖細胞クローンが見いだされ、組み込みの44%は細胞増殖に関与する遺伝子の近傍で起こっていた。組み込まれたベクターは、回収された全てで部分的な欠失や再構成が認められた。今回のデータは、2頭のイヌでのFVIIIタンパク質発現量の増加が、組み込まれたベクターを有する細胞のクローン性増殖によるものである可能性を示唆している。以上の結果は、血友病Aの肝臓特異的AAV遺伝子治療の臨床開発を支持する一方で、潜在的な遺伝毒性を長期にわたって追跡することの重要性を強調している。

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